俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
つい声を大きくすると、隣にあぐらをかいた兄が梨乃の取り皿を奪って海老の殻をむき始めた。

「機嫌悪いな。自分が初詣デートできないからって俺にあたるなよ」

似たもの兄弟にはうんざりだ。このふたりに比べると。多少俺様なところがあっても黒見は優しいと思える。

婚約破棄に落ち込んでいたひとり旅では励ましてくれたし、クリスマスイブには豪華な食事をご馳走してくれた。レストランでは梨乃が飲みすぎないように気を配ってくれて、帰りは紳士的にタクシーで自宅まで送ってくれた。

黒見の顔を思い出すと、兄の失礼発言への腹立たしさはいくらか軽くなる。

「お兄ちゃんがデートをしても羨ましくもなんともないから。当分は恋愛する気ないし」

「モテない女の強がりか」

「恋愛したくないだけでモテないわけじゃない。勤務先の三十六歳イケメンCEOに交際を申し込まれて断ったんだけど」

一拍の沈黙のあとに、「嘘つけ」という兄弟の声が重なった。

なぜか両親は哀れむような視線を向けてきた。ということは信じていないのだろう。

(そういう反応になるのも仕方ないか。交際を求められたと言っても、私も黒見CEOの本気度を疑っているくらいだし)

現時点ではなぜか気に入られているが、どうせすぐに熱は冷めるだろう。

その時、座卓の上に置いていた梨乃の携帯が鳴った。

黒見の名前が表示されて心臓が波打つ。

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