幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜
ココアを飲み終わってコップを捨て手が空くと、美風は当然の様に恋の右手を優しく取った。
恋は、さすがに手を繋ぐのは恋人の印だと思っていたので、ちょっと躊躇した顔をした。
「これってデートだよね。上野が来なくて良かった。3人でって言ったけど、本当はもちろん2人きりで来たいんだ。」
「樋山くん、好いてくれて嬉しいけど、私なんかの何が良いの?」
「何それ。変な事言うね。僕にとって新田さんは全部が魅力的だよ。最も、上野と付き合ってる所が最低だとは思うけど。」
「宗介、来たがらなかったんだ。」
ぽそりと呟いた恋に美風は答えなかった。
駅の構内には、色々な雑貨屋があった。
大人のお洒落な洋服を一緒に置いている店もあれば、可愛らしい髪飾りだけの専門店もあった。
恋と美風はそのうちの一つのアクセサリーショップに入った。
小さな店内に並んだ銀色や金色の指輪の横に、細いチェーンのネックレスが売られている。
「新田さん、いきなり指輪を贈られたら引く?」
「えっ」
恋は困った顔で言った。
「今日は宗介のプレゼントを買いに来たんだけど。」
「え、上野に?。あいつなんかに買うことないよ。」
美風がちょっと機嫌を悪くした声で聞いた。
「本当に買うの?。僕の前で?。意地悪い。」
「え、うーん。」
美風は機嫌の悪い顔をしていたが、やがて声の調子を変えると聞いた。
「ネックレスを買うんでしょう?」
「あ、そうしようと思って。」
「それなら、僕にも買って。」
断固たる声音で美風が言ったので、恋はうっと唸った。
「ずるいよ。上野ばっか。僕だって新田さんを好きなのに。」
美風が恋を見た。
まっすぐな、美しい淡い色の瞳には、まるで見透かされている様なパワーがある。
「断るなら、今は三角関係ごっこで良いから。君が僕を好いてる証拠が欲しいんだ。」
根負けした恋が同じネックレスを二つ取ると、美風はそれを見て怒り笑いした。
「別のを選んでよ。あいつとお揃いになっちゃうだろ。」
ラッピングせずに、その場でネックレスを渡すと、美風はネックレスにチュっとキスした。
「ありがとう、一生大切にする。」