幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜
6ピアノの発表会








 恋と宗介は、宗介の自宅のリビングでゆったりお茶を飲んでいた。


「理央と手作りのお菓子屋さんに行ってきたんだ。」


 恋が言った。


「焼き菓子やマフィンがあって、目移りしちゃう。近所に出来たばっかりの可愛いお店、宗介も今度行ってみると良いよ。」

「甘いものは食べ過ぎると頭が痛くなる」


 宗介が言った。


「虫歯になるよ。お前と違って子供じゃないの。」

「大人でも食べるよ、甘いもの。」

「お前はいつもキャットフードだろ。狐の餌の。」

「狐になってる時は食べるけど、人の姿の時は食べないよ。」


 恋が言って、ずず、とお茶を一口飲んだ。

 部屋の隅の狐用の空のケージの前には、新しいキャットフードが出してある。

 恋のキャットフードは新商品が出る度に宗介の母親が恋に買ってくれた。

 恋が言った。


「そういや、樋山くんのピアノの発表会、もうすぐだよ。」

「気障。ピアノなんか。いちいち癪に障る奴だな。」

「一回音楽室で弾いて貰った事がある。すっごい上手なんだよ。いつから習ってるんだろう。」

「知らない。興味ない。」


 恋は、美風のピアノの発表会を楽しみにしていた。

 発表会には、理央と明日香と多紀を誘って、みんなで行くことになっていた。


「宗介も行くでしょう?」


 恋が聞いた。


「僕が?。わざわざ?。何のために?」

「みんなで行くんだから一緒に行こうよ」

「嫌だよ。樋山のピアノなんて聞きたくないし興味もない。一人で行ってきな。」


 宗介はお茶を一口飲むと、ふと、作り笑顔で聞いた。


「僕が樋山嫌いなの、何でか分かる?」


 この問は全てを意味している。

 宗介はこの事について、毎日頭を悩ませていたのだった。


「……何でなの?」


 恋がきょとんとした顔で聞き返すと、宗介は無言でグーした片手を、恋の頭にコチンと落とした。


「痛っ」

「何でだろうね?。」

「何すんの」

「鬱陶しいんだよお前も。ったく。」


 ぶつぶつ言っている恋を無視して、宗介はテレビに向かってリモコンを回し出した。


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