元婚約者様、その子はあなたの娘ではありません!
私は薬草畑の端にしゃがみ、地面に触れるといつものようにゆっくりと魔力を流し込んだ。
魔力がじんわりと畑全体に広がっていくのを感じる。
うん、今日のところはこれくらいで十分だろう。
傍らに置いていた籠を持って立ち上がり、数種類の薬草が植えられた畑に足を踏み入れた。
私の魔力を土から吸い上げた薬草たちが元気いっぱいに育っている。
畑全体を結界で覆っているから、害虫や害獣に食べられることもなく、つやつやの葉も控え目な花弁も傷一つないきれいな状態だ。
今日は咳止めと傷薬を調合する予定になっている。
その素材となる薬草を収穫しようと屈んだその時。
「マリエット……なのか?」
「はい?」
背後から名を呼ばれ、私は反射的に返事をしながら振り返った。
「マリエット……ああ、本当にマリーだ……!」
そこにいたのは、ややくたびれた旅装姿の男性だった。
なんだか聞き覚えのある声な気がして眉をひそめた私は、青年がマントのフードを外して晒した顔を見て水色の瞳を見開いた。
「アロイス⁉」
気のせいではなく、私の記憶は正しかったのだ。
なんで彼がこんなところに?
魔力がじんわりと畑全体に広がっていくのを感じる。
うん、今日のところはこれくらいで十分だろう。
傍らに置いていた籠を持って立ち上がり、数種類の薬草が植えられた畑に足を踏み入れた。
私の魔力を土から吸い上げた薬草たちが元気いっぱいに育っている。
畑全体を結界で覆っているから、害虫や害獣に食べられることもなく、つやつやの葉も控え目な花弁も傷一つないきれいな状態だ。
今日は咳止めと傷薬を調合する予定になっている。
その素材となる薬草を収穫しようと屈んだその時。
「マリエット……なのか?」
「はい?」
背後から名を呼ばれ、私は反射的に返事をしながら振り返った。
「マリエット……ああ、本当にマリーだ……!」
そこにいたのは、ややくたびれた旅装姿の男性だった。
なんだか聞き覚えのある声な気がして眉をひそめた私は、青年がマントのフードを外して晒した顔を見て水色の瞳を見開いた。
「アロイス⁉」
気のせいではなく、私の記憶は正しかったのだ。
なんで彼がこんなところに?
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