元婚約者様、その子はあなたの娘ではありません！

「ずっと探していたんだよ、マリー。
　やっと見つけた……」

「えぇ？」

　彼の名は、アロイス・プラスロー。
　プラスロー伯爵家の嫡男で、私の元婚約者。

　彼と最後に会ったのは、今からだいたい五年前のことだ。

　当時十九歳だった彼は、銀糸の髪に緑の瞳の貴公子で、騎士としての能力を認められ始めたところだった。

　私の記憶では輝かしい騎士だった彼が、冒険者のような服装でどこか荒んだ印象の険しい顔になってしまっている。

　私を探していたの？
　どうして？
　わけがわからない！

「あ、あの、シルヴィは」

　今度は、彼が眉をひそめる番だった。

「……もしかして、新聞読んでないのか」

　私は頷いた。
　
　王都を離れ、この田舎町に住みついてからは新聞を読むこともなかったし、王都の情報を誰かから伝え聞くようなこともしなかった。

「きみが誤解していたのはわかっていたが、あの時はどうしようもなかったんだ……
　ちゃんと説明するから、俺の話を」

「ママ？」

　彼の言葉を、あどけない声がさえぎった。

　声がしたほうに目を向けると、私と同じ色の金髪に碧の瞳の、小さな女の子が可愛らしく首を傾げてこちらを見ていた。