30歳、年下わんこに愛されています
 唇が優しく触れた。
 時間が止まったように感じた。
 それは何度も、何度も、確かめるように。
 息をするのも忘れて、夢中でキスをした。

 「……今夜だけは、俺を見て」

 その言葉に、胸が、頬が、熱くなるのを感じた。

 「そういうの……、ずるい」

 呼吸が荒くなり、鼓動が早く感じる。
 これは、私なのか、彼なのか、もうわからなかった。
 気がつけば、腰が抜けて崩れ落ちていた。

 その瞬間、ふいに体がふわりと浮いた。
 驚いて顔を上げると、光がまっすぐな瞳で私を見つめている。

 「歩けそうにないでしょ」
 小さく笑いながら、軽々と腕の中に抱き上げる。

 「重たいでしょ」
 「いや、もっと食べた方がいいですよ」

 お姫様抱っこのまま、静かな部屋の奥へと運ばれていく。
 その腕の力強さと、肩にかかる呼吸の近さに、胸がきゅっと締めつけられた。

「丸田くん、こういうの、慣れてる?」
「そう見えるなら、よかった」

 ぬくもりが、孤独と痛みを溶かしていく。

 悲しみの中にあっても、人の優しさに救われる夜がある。
 この夜が、そうだった。
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