社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!
彼はイナギホールディングスの御曹司。
けれど社内では母方の姓を名乗り、“浅賀亮”として働いている。
結婚していることも、身分のことも、誰にも言えない。
そんな“秘密の夫婦生活”を、もう三年続けている。
イナギホールディングス・広報課。
朝のオフィスはコーヒーの香りと、パソコンの立ち上がる音でいっぱい。
「おはようございます〜」
「渡辺さん、おはよ。今日も早いね。昨日の資料助かりました! 本当に感謝です!」
「えっ、いえいえ〜! 気になっちゃって……」
私、渡辺小春。身長156センチとやや小柄。やわらかなミルクティー色の髪をゆるくまとめ、笑うと二重の瞳がふんわり弧を描く。派手な顔立ちやスタイルのいい高身長に憧れるが、どちらかと言うと童顔で美人とは程遠い顔立ちだ。
高校の頃もそうだった。
文化祭の準備でみんながバタバタしてるとき、気づくと誰かに声をかけ、道具を並べて、場を明るくしていた。私ってなんだか昔から全然変わってないのかもしれない。
「いや〜、昨日の修正完璧でしたよ!」
「関数まで直してくれてましたし!」
「それに印刷部数まで合わせてくれてた!」
「気が利きすぎでしょ〜」
チームのみんながそれぞれ私を煽てるように声をかけてくれる。それがなんだか恥ずかしくて、
「も、もう……そんなに褒めないでください」
両手をぶんぶんしながら笑う。その笑顔に、まわりの空気がふっとやわらぐ。
「やっぱり渡辺さんが1位って納得だよな〜!」
「わかる。人当たり良すぎるもん」
「俺、失敗してもあの笑顔で許してもらいたい……」
すると今度は違う話題に話が変わる。どうやら時々こっそり男性社員の間で行われているランキングの話らしい。私は『お嫁さんにしたい人ランキング』でナンバーワンらしい。どうしてそんなことになるのか見当もつかない。ちょっとおせっかい焼きなところがあるくらいで、もてはやされるような人でないのは自分でよくわかっている。
「ちょ、ちょっと皆さん? そういう話題はやめてください!」
噂話に顔が熱くなるのを感じ、慌ててしまう。
その向こうで、ひとりだけ表情が動かない男がいる。
ーー開発部の浅賀くん(=亮)。
メガネの奥の切れ長の瞳が、こちらをちらり。昔からこうだった。
高校のときも、私が誰かに話しかけられるたび、無言で視線だけ向けていた。
(変わってないな……そういうところ)
けれど社内では母方の姓を名乗り、“浅賀亮”として働いている。
結婚していることも、身分のことも、誰にも言えない。
そんな“秘密の夫婦生活”を、もう三年続けている。
イナギホールディングス・広報課。
朝のオフィスはコーヒーの香りと、パソコンの立ち上がる音でいっぱい。
「おはようございます〜」
「渡辺さん、おはよ。今日も早いね。昨日の資料助かりました! 本当に感謝です!」
「えっ、いえいえ〜! 気になっちゃって……」
私、渡辺小春。身長156センチとやや小柄。やわらかなミルクティー色の髪をゆるくまとめ、笑うと二重の瞳がふんわり弧を描く。派手な顔立ちやスタイルのいい高身長に憧れるが、どちらかと言うと童顔で美人とは程遠い顔立ちだ。
高校の頃もそうだった。
文化祭の準備でみんながバタバタしてるとき、気づくと誰かに声をかけ、道具を並べて、場を明るくしていた。私ってなんだか昔から全然変わってないのかもしれない。
「いや〜、昨日の修正完璧でしたよ!」
「関数まで直してくれてましたし!」
「それに印刷部数まで合わせてくれてた!」
「気が利きすぎでしょ〜」
チームのみんながそれぞれ私を煽てるように声をかけてくれる。それがなんだか恥ずかしくて、
「も、もう……そんなに褒めないでください」
両手をぶんぶんしながら笑う。その笑顔に、まわりの空気がふっとやわらぐ。
「やっぱり渡辺さんが1位って納得だよな〜!」
「わかる。人当たり良すぎるもん」
「俺、失敗してもあの笑顔で許してもらいたい……」
すると今度は違う話題に話が変わる。どうやら時々こっそり男性社員の間で行われているランキングの話らしい。私は『お嫁さんにしたい人ランキング』でナンバーワンらしい。どうしてそんなことになるのか見当もつかない。ちょっとおせっかい焼きなところがあるくらいで、もてはやされるような人でないのは自分でよくわかっている。
「ちょ、ちょっと皆さん? そういう話題はやめてください!」
噂話に顔が熱くなるのを感じ、慌ててしまう。
その向こうで、ひとりだけ表情が動かない男がいる。
ーー開発部の浅賀くん(=亮)。
メガネの奥の切れ長の瞳が、こちらをちらり。昔からこうだった。
高校のときも、私が誰かに話しかけられるたび、無言で視線だけ向けていた。
(変わってないな……そういうところ)