社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!
昼休み。
広報課のデスクに、お弁当箱をぽんと置く。

「今日は自作なんですね〜」

「はい、ちょっと早起きしたので!」

「うわ〜、めっちゃ彩りきれい!」

「卵焼きふわっふわ! やっぱり家庭的〜!」

お嫁さんにしたいランキング効果が勝手にまた上がっていく。同僚の女子たちが盛り上がる横で、男子社員たちはちらちらと視線を送ってくる。

「渡辺さん、それ一人分?」

「え? はい、もちろん」

「ですよね〜。あはは……」

(なんで聞くの、そこ……)

そう、確かに“一人分”。
でも昨夜、亮くんの分も同じように詰めたのはナイショ。夫婦で同じお弁当を食べてるなんて、絶対言えない。

その頃、開発部の休憩スペースでは同じような会話がされていた。

「浅賀くん、それ手作り?」

「……はい」

「へぇ〜、すごい彩りだね。誰か作ってくれたの?」

「……自分で、です」

質問が多いなと少しヒヤヒヤしてしまう。だって、見た目がどう見ても“男子の弁当”じゃないから。
卵焼きはハート型、ミニトマトは飾り切り、ブロッコリーには小さなピック。彩り完璧、愛情過多。

(……小春、またハート入れたな)

「浅賀くん、その卵焼き……ハートになってない?」

「……気のせいです」

「え、でも——」

「気のせいです」

つい語気が強くなってしまい、同僚たちはそっと話題を変えた。
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