社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません！

昼休みの終わりになると休憩室はいつものようにおしゃべりの花が咲いていた。

「ねぇねぇ、浅賀さんって本当に御曹司なのかなぁ」

「またその話〜？　昨日も言ってたじゃん」

そろそろこの話題も新しいネタもないので飽きてきているように感じた。それでも、

「だって、地味すぎて逆に怪しくない？」

あぁ、どうしてこう鋭いのだろう。コーヒーを飲みながら、遠く逃してテーブルで繰り返される噂を、もはやニュースの天気予報くらいのテンションで聞いていた。私から少し離れたところでお弁当を食べていた亮くんにもこの話は聞こえている気もするが、彼も気にするそぶりはない。反対にお弁当を小さく指さすとニコッと私にだけしかわからないくらいの表情の変化で『美味しい』と伝えてきてくれる。私も思わず小さく笑顔で返した。誰にも気づかれないような小さなやり取りだけで、心の中にぽっとあかりが灯るようだった。