社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!
広報課では資料の整理をしていたが、開発部からの緊急の連絡が入り空気が一気に張り詰めた。

「至急、前回のデモ用映像のコピーが欲しいって!」

「わかりました」

すぐに共有サーバーを開いて探すと、データフォルダの中に懐かしいファイル名を見つけた。

「これ……」

私は迷わず亮くんへメッセンジャーを飛ばす。

【前のデータ残っていたからすぐに送るね】

【助かる! やっぱりお前は頼りになる、最高!】

短いやり取りだが、彼の役に少しでも立てたと思うと気分が高揚する。開発部の方はザワザワとしたやり取りが続いているが、私たちの方では何も手伝えることがなく、成り行きを見守る。
2時間後、沈黙していたサーバーが再び光を放つ。

「やった! 動いた……! デモ復旧しました!」

「浅賀さんのコードで戻りました」

一瞬の静寂の後、フロア中に拍手が起こった。
よかった……
どうなることかと内心ここにいる全員が思っていただろう。でも、亮くんのおかげで復旧できたようだ。
ここまでのピンチを乗り切った開発部を見て、フロア全体がとても興奮していた。その興奮のせいか、私もつい彼にまたメッセージを送ってしまった。

【お疲れ様。すっごくかっこよかった!】

それを見たのかちらりと私の方を見てきて、目線で“そうだろう“とばかりに頷いている。彼の目が生き生きして充実しているように見えた。
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