社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!
居酒屋「海鮮処いろは」。
木の香りとアルコールの熱気に包まれた個室で、ここは会社の飲み会でよく使う。ここに来るたびに違う創作料理を食べるのが私の唯一の楽しみだ。
照明の少し暗い個室で、乾杯と何度もグラスがぶつかり合う。
「浅賀くん、意外と飲めるじゃん!」
「……ほどほどに、です」
「渡辺さんもどう? 梅酒いける?」
「す、少しだけ……」
テーブルを挟んで、少し離れた席に亮くんがいる。
メガネ越しの視線がときどきこちらに滑ってくるのを、私は何度も気づかないふりをした。すると後から来た神谷くんが私の隣に座った。私がこの空気に馴染めなくならないようにさりげなくお皿を取ってくれ、食べ物を取り分けてくれた。
「ほら、唐揚げどう? 熱いうちに食べな」
「ありがとう」
彼はみんなにも気を配り、食べ物を取ったり会話を盛り上げたりしていた。その隣で私は彼のグラスを交換したり、彼が自分の分を食べそびれないようにとそっとお皿に乗せてあげていた。
「渡辺さん、浅賀くん、神谷くんは同期だっけ?」
「はい、同期入社です」
「そっか〜。息ぴったりに見えるもんなぁ」
一瞬で空気が止まる。
(ちょ、ちょっと待って、それ言わないで!)
焦る私をよそに、「普通です」とだけ亮くんは言うとグラスを口に運んだ。
その横顔がほんの少しだけ冷たく見えて、胸がざわざわした。
「ほどほどですよ。渡辺さんとは一緒に配属されたからよく話すけどな」
私の顔を見ながら、神谷くんは卒なくそんな返事をしていた。
「貴重な同期ですからね。同期みんなで相談しあったりもしますよ」
「上司の愚痴とかの共有?」
そんな軽口をたたかれ、「そんなことないです」と焦っている私を見て、神谷くんが間に入り場を和ませてくれた。
亮くんと私の関係を怪しまれたわけではなさそうでホッとした。でもそんな様子を遠くで亮くんは見ている。
(あ……絶対に機嫌悪い)
木の香りとアルコールの熱気に包まれた個室で、ここは会社の飲み会でよく使う。ここに来るたびに違う創作料理を食べるのが私の唯一の楽しみだ。
照明の少し暗い個室で、乾杯と何度もグラスがぶつかり合う。
「浅賀くん、意外と飲めるじゃん!」
「……ほどほどに、です」
「渡辺さんもどう? 梅酒いける?」
「す、少しだけ……」
テーブルを挟んで、少し離れた席に亮くんがいる。
メガネ越しの視線がときどきこちらに滑ってくるのを、私は何度も気づかないふりをした。すると後から来た神谷くんが私の隣に座った。私がこの空気に馴染めなくならないようにさりげなくお皿を取ってくれ、食べ物を取り分けてくれた。
「ほら、唐揚げどう? 熱いうちに食べな」
「ありがとう」
彼はみんなにも気を配り、食べ物を取ったり会話を盛り上げたりしていた。その隣で私は彼のグラスを交換したり、彼が自分の分を食べそびれないようにとそっとお皿に乗せてあげていた。
「渡辺さん、浅賀くん、神谷くんは同期だっけ?」
「はい、同期入社です」
「そっか〜。息ぴったりに見えるもんなぁ」
一瞬で空気が止まる。
(ちょ、ちょっと待って、それ言わないで!)
焦る私をよそに、「普通です」とだけ亮くんは言うとグラスを口に運んだ。
その横顔がほんの少しだけ冷たく見えて、胸がざわざわした。
「ほどほどですよ。渡辺さんとは一緒に配属されたからよく話すけどな」
私の顔を見ながら、神谷くんは卒なくそんな返事をしていた。
「貴重な同期ですからね。同期みんなで相談しあったりもしますよ」
「上司の愚痴とかの共有?」
そんな軽口をたたかれ、「そんなことないです」と焦っている私を見て、神谷くんが間に入り場を和ませてくれた。
亮くんと私の関係を怪しまれたわけではなさそうでホッとした。でもそんな様子を遠くで亮くんは見ている。
(あ……絶対に機嫌悪い)