社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!
二次会は定番のカラオケ。
ネオンがちらつく小さな部屋に十数人。音楽と笑い声と、少しのアルコールの匂い。
今度は意識したのか亮くんが私の隣にさりげなく座っている。でも反対側にはなぜかまた神谷くんがいる。
「浅賀くん〜、歌ってよ! ほらあのCMの曲」
「いや、僕は……」
「じゃあ渡辺さんとデュエットならいい?」
「えっ!? い、いやいや!」
半ば強引にマイクを渡されて、亮くんと並んで立たされる。無表情なのにどこか隣にいるだけで不思議な安心感がある。流れてきたのは、大学の頃によく聴いていたバラード。
——あのとき、告白された夜に流れていた曲。
それを思い出し、マイクを握る手が少し震える。目を逸らしたくても、亮くんがこちらを見ている。
あの頃と同じ、切れ長の目。静かで優しい光が宿っていて、心臓が変な音を立てた。
(ダメ……今ここで見つめないで)
サビの直前、音に合わせて、思わず唇が動いてしまった。
「りょ——」
一瞬、空気が凍った。マイク越しに自分の声が少し響いており、みんなの視線がこちらに向く。
(やばっ……今、言った!?)
「“リョウライダー”懐かしいなぁ。俺、中学のときめっちゃ聴いてた」
亮くんの低い声が、すぐに空気を切った。場が笑いでざわめく。
「え、あのアニメの曲?」
「懐かしい〜!」
そんなみんなの声が上がり、ほっとした。助かった……。今も心臓はドクンドクンと強く脈を打っているのを感じ、本気で泣きそうだ。
でも亮くんがマイクを下ろしながら、一瞬だけこっちを見た。その口元が小さく動く。
——「セーフ」
私は息を吐いた。そして小さく頷いた。
(ほんと、心臓止まるかと思った……)
ネオンがちらつく小さな部屋に十数人。音楽と笑い声と、少しのアルコールの匂い。
今度は意識したのか亮くんが私の隣にさりげなく座っている。でも反対側にはなぜかまた神谷くんがいる。
「浅賀くん〜、歌ってよ! ほらあのCMの曲」
「いや、僕は……」
「じゃあ渡辺さんとデュエットならいい?」
「えっ!? い、いやいや!」
半ば強引にマイクを渡されて、亮くんと並んで立たされる。無表情なのにどこか隣にいるだけで不思議な安心感がある。流れてきたのは、大学の頃によく聴いていたバラード。
——あのとき、告白された夜に流れていた曲。
それを思い出し、マイクを握る手が少し震える。目を逸らしたくても、亮くんがこちらを見ている。
あの頃と同じ、切れ長の目。静かで優しい光が宿っていて、心臓が変な音を立てた。
(ダメ……今ここで見つめないで)
サビの直前、音に合わせて、思わず唇が動いてしまった。
「りょ——」
一瞬、空気が凍った。マイク越しに自分の声が少し響いており、みんなの視線がこちらに向く。
(やばっ……今、言った!?)
「“リョウライダー”懐かしいなぁ。俺、中学のときめっちゃ聴いてた」
亮くんの低い声が、すぐに空気を切った。場が笑いでざわめく。
「え、あのアニメの曲?」
「懐かしい〜!」
そんなみんなの声が上がり、ほっとした。助かった……。今も心臓はドクンドクンと強く脈を打っているのを感じ、本気で泣きそうだ。
でも亮くんがマイクを下ろしながら、一瞬だけこっちを見た。その口元が小さく動く。
——「セーフ」
私は息を吐いた。そして小さく頷いた。
(ほんと、心臓止まるかと思った……)