Powdery Snow

不意に出た言葉に弘人は「あ?」と怒りの混じった声で返す。


「だからムカつくんだよ」 


口から洩れた言葉は小さく小さくかき消されるほど小さく震えた声だった。

その小さな声を弘人は拾って、あたしに目を向ける。


「何が?俺、亜希に何かした?」 


何もしてない。
何もされてない。


それが本当の答えだから、あたしは首を振ると「じゃあ何で?」と弘人は問いただしてくる。


ハァ…と息を吐くと顔の周りで吐いた白い息が薄らと消えていき、地面を見つめていた時間は結構経っていただろう。


ほんの何分って時間なんだけど、この冷えきった外にいると異様にも長く感じた。 


< 59 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop