セレナーデ

一度駐車場を通らねばならない。
電話の向こうの一望が、『あ、いた』と零す。

わたしが顔を上げたのと同時だった。

「おかえり」

電話よりも本人から聞こえる声の方が大きかった。
車の外に出て、ひらひらと手を振る姿。

「どうしたの」
「近くで用事あったから、寄ってみた」
「本当に?」

驚き半分、怪訝が半分。

「いや嘘。また終電で帰って来ると思ったから、迎えに来た」

にこ、と笑っている。表情が読めない。
というか。

「会社の人に見つかったら面倒だから入って」
「えー、朔子くらいじゃない。こんな時間までいるの」

< 20 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop