セレナーデ
一度駐車場を通らねばならない。
電話の向こうの一望が、『あ、いた』と零す。
わたしが顔を上げたのと同時だった。
「おかえり」
電話よりも本人から聞こえる声の方が大きかった。
車の外に出て、ひらひらと手を振る姿。
「どうしたの」
「近くで用事あったから、寄ってみた」
「本当に?」
驚き半分、怪訝が半分。
「いや嘘。また終電で帰って来ると思ったから、迎えに来た」
にこ、と笑っている。表情が読めない。
というか。
「会社の人に見つかったら面倒だから入って」
「えー、朔子くらいじゃない。こんな時間までいるの」