セレナーデ
結婚したからといって、それが混じり合うわけもなく。
粟野は唯一、わたしの周りで婚姻を知っている人間で、よくこうして愚痴を零してしまう。
「それから、桐原さんの傍にいると、私もただの凡人です」
立ち上がって粟野は少し笑った。表情は見えない。
「仕事いっぱい貰えて、羨ましいですよ」
終電コースは避けることにして、会社のエレベーターを出た。
見計らうようにしてかかってきた電話に出る。
『朔子、今どこ?』
「今は」
正面の玄関はしまっているので、裏口へ向かう。