セレナーデ

そこにわたしが持ってきた一台のギターも仲間入りしている。

「溶け込めないねえ……」

声をかけるが、返事はない。
借りてきた猫みたいに静かに佇むギターは、ただそこにあるだけ。

たまに取り出して弾くけれど、学生の頃みたいな距離には戻らない。

「朔子?」

ひょこ、と扉の向こうから顔を出してこちらを窺う一望。

「何してるの」
「楽器、見てた」
「楽器は弾くもんだよ」

一望がチェロをケースから出していく。

その言葉を初めて一望から聞いたとき、歩んできた世界が違う人だと思った。

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