敏腕エリート部長は3年越しの恋慕を滾らせる
 九月に入り、秋のスポーツシーズンを前に、『WING』では様々な企画が同時進行で行われていて、もれなく業務部の美絃も仕事に追われている。

 十三時過ぎ。
 漸く仕事が一区切りした美絃は社食へと向かう。

「あっ、美絃も今からお昼?」
「うん」

 たまたまエレベーターで乗り合わせたのは、広報部の藤巻(ふじまき) 洋子(ようこ)(同期・二十八歳)。
 同期の女子社員の中では、一番仲のいいのが洋子だ。

『WING』はスポーツメーカーということもあって、社員は学生時代にスポーツ経験があったり、元アスリートという人も少なくない。
 新入社員研修でまず始めに『同期会をつくる』というのがお決まりで、チームワークを大事にする社風だ。
 しかも、お昼休みや休憩は各自で調整してとるというのが暗黙のルールで、時間に拘束されないフレキシブルさが美絃が気に入っている点でもある。

「今日の日替わりランチ、カツカレーセットだって」

 美絃より一足先にメニューを見た洋子が、美絃の腕を軽く叩く。
 
「じゃあ、日替わりランチにしようかな」
「私も同じにしようっと」

 列に並んで順番を待っていると、社食にいる人々の視線を集める男女を発見。
 混雑する社食フロアに一際目立つ美男美女がいる。

(えっ……千尋さんだ。お昼休みまで気を遣うのは嫌だから、社食は使わないって言ってたのに……)

 これまで、一度も社食で見かけたことはない。
 いつも出先で食べたり、近場の蕎麦屋や和食処を利用していると言っていた。

 千尋の隣りで楽しそうに話しながら食べる女性。
 自分の皿からブロッコリーを弾くように、千尋の皿に乗せた。
 その行動に動揺することも驚くこともせず、呆れ顔で会話を続けているのを見て、美絃の胸がチクンと痛んだ。
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