敏腕エリート部長は3年越しの恋慕を滾らせる
「おかえり」
「……ただいま戻りました」

 意識朦朧としながら、漸くマンションに辿り着いた美絃は、その場にへたり込んでしまった。

「大丈夫か?」
「……大丈夫じゃ……うっ……っ……」

 張り詰めていた緊張が途切れて、必死に堪えていた涙が溢れ出した。

 その後は、千尋さんが用意してくれたお風呂にゆっくり浸かって、さらには彼が作ってくれたパスタを戴いた。

 リビングのソファに座り、今日の出来事を話す。
 磯田部長から聞いていたようで、大体の内容を把握していた彼は、何度も小首を傾げている。

「美絃は自分のパソコンを他人に貸すことがあるのか?」
「ありません。会社から支給されているパソコンですが、パスワードは私しか知りませんし、そもそも担当してなければ、どんな受注状況なのかも把握しきれません」
「なるほどな。……俺の方でも調べてみるよ」
「……はい」

 何を調べるのかさっぱり分からないが、美絃は他のことを考える余裕がなく、殆ど空返事の状態だった。

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