敏腕エリート部長は3年越しの恋慕を滾らせる
 昼食を終えた美絃は社屋へと戻り、階数表示を見上げ、エレベーター待ちをしていると、スッと真横に人の気配を感じた。

(あっ……、郡司(ぐんじ)部長だ。相変わらずいい香りがするし、超絶美形だなぁ)

「ん? 俺の顔に何か付いてるか?」
「ふぇっ?」

 綺麗すぎる顔をまじまじと見上げていたら、ちょっと低めの落ち着いた声音が降って来た。

「あっ、何も付いてませんっ! あまりにもカッコいいので、つい見惚れてしまいましたっ」
「……フフッ、そりゃどうも」

(クスっと笑った顔は普段の強面な感じと違って、フェロモンが漂うくらい甘い雰囲気なんだ! わぁ、今日はかなりツイテルかも、私)

 海外事業部の統括部長・郡司(ぐんじ) 千尋(ちひろ)(三十三歳)。
『鬼軍曹』と言われていて、仕事には一切妥協しないと有名。
 海外支社を何か国か赴任し、実績を残し、三年前に本社へと戻って来た、社内きっての敏腕エリート社員だ。

 軽く固められたアップバンクの黒髪、百八十センチを超える長身、細身ながらもほどよくついた筋肉。
 イケメン俳優にも劣らない整った顔つき、モデルのように手足が長く、三つ揃えのスーツがよく似合う。
 
「そう言えば、この間の集計データ、過去五年分のデータも一覧にしてくれてとても助かったよ。いつもありがとう」
「っ……、いえ、当たり前のことをしただけなので」
「他の人に頼んでも、前年と今年のデータくらいで、さすがに五年分を比較できるものを用意してくれるのは、高岡さんくらいだよ」
「……褒めすぎです」

 いつも無理やり仕事を擦り付けられたり、雑務をさせられることが多い美絃にとって、きちんと仕事の成果を認めてくれる人は、業務部の部長とこの郡司部長くらいなものだ。

 ピンポンと、エレベーターの到着を知らせるチャイムにビクッと肩を震わせた。

「どうぞ?」
「あっ……ありがとうございますっ」

(イケメンって、行動までスマートでカッコいいの?! 本来なら、私がすべきことなのに)

 扉が閉まらないように手で押しとどめ、先に乗せてくれる紳士ぶり。
 郡司部長は、美絃の憧れの社員である。
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