敏腕エリート部長は3年越しの恋慕を滾らせる
 遡ること、三年前。
 海外支社から本社勤務になった千尋は、会社の期待に応えようと必死だった。
 がむしゃらに働いたつけなのか、ある日、凄く具合が悪くて。
 半休取ろうか、医務室で休もうか悩みながら、給湯室で一息入れていた。

 すると、珈琲を淹れに来た女性社員が、千尋の顔色を見て心配し、ハーブティーを淹れてくれた。
 しかも、『ごゆっくり』と声をかけて、給湯室を後にした。
 その後、十五分ほど休んだ千尋は、気合を入れ直し、給湯室のドアを開けると……。
『メンテナンス中につき、使用不可』と書かれた紙が、ドアに貼られていたのだ。
 千尋がゆっくりと休めるようにと、最大限の気遣いである。

 この出来事をきっかけに、『高岡 美絃』という女性社員が気になり始めた。

 千尋は整った容姿のせいで、昔から男性女性問わず好意を寄せられることが多く、下心が見え見えな人も少なくない。
 女性に興味がないというわけでもないし、全く遊んでないとも言い切れない。
 それなりに経験は積んで来たつもりだが、美絃のようなタイプは初めてだった。

 海外事業部と業務部。
 あまり接点がないような関係性で、受発注やデータ管理も、部下に指示を出せば済む話で、千尋が直接関わることは皆無に等しかった。
 それでも気になって仕方のない彼女に会うために、理由をつけては顔を覗きに行っていたのだが……。
 
 一年が経った頃、彼女に恋人がいることを知ってしまった。
 しかも同じ会社の社員で、彼女と同期だということを。
 彼氏と社食で仲良く食事をする様子や一緒に帰る姿を見て、恋心を自覚した。
 千尋は知らず知らずのうちに美絃に恋をしていたのだ――――手遅れではあるが。

 恋人がいると分かっても、好きな気持ちが消えることはなく。
 三年間ずっと封印していた想いが、目の前で暴言を吐かれて傷つき、捨てられた彼女を目の当たりにして……もう感情も理性も抑え込むことが出来なくなっていた。

 気付けば、彼女の後を追っていて、ご両親に打ち明けそうになっている彼女の手を必死に掴んでいた。
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