アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~
 歩きながら窓の外を見る。
 夜の庭園。
 ハリは今、何を考えているのだろう。
 彼はまだ孤独の中にいる。
 ラインアーサは迷いながらも覚悟を固める。

 正しいかそうではないか以前にルゥアンダ帝国 皇家の方針に口出しなどはするつもりもない。
 彼が何を選び、どんな道を歩むのか。
 やりたい事があるのなら、止めはしない。
 それでも〝側近のハリ〟でいる間は〝同行〟を赦し、信じていたい。糾弾しない。様子を見ながらでも側に置く。そう、決めた。
 それは甘さではなく人を信じるという、いずれシュサイラスア大国の王となるべくラインアーサの覚悟だった。

 ───収穫祭の、あの夜。
 身の安全を確保する為、正式にスズランの王宮保護が決まった。王宮へと迎えられ程なくして、まだ仮ではあるが王宮作法の指南も始まった。
 指南役はジュストベル。コルトやサリベル、リーナも協力してくれている。アダンソン家の力添えは計り知れない。
 先日、何度かスズランの教育風景を遠目に眺める機会があった。ジュストベルが礼法を教え、リーナが姿勢を直す。また別の日、サリベルが書簡の言い回しを助言し、コルトがリノ・フェンティスタの気候地図を広げる。
 スズランは少し緊張しながらも、真剣そのもの。様々な知識を豊かに蓄えていく姿はラインアーサの瞳に、とても眩しく映った。少しずつ〝守られる少女〟から〝隣に立つ存在〟へと変わっていく。
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