アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~
「す、すみません。どうしても慣れなくて…」

「もう〜、どんなに可愛らしく謝っても駄目ですよ!」

 両手を胸の前でぎゅっとしながら謝る姿のスズランはとても可愛らしく、何でも許したくなってしまいそうだ。現にサリベルもリーナも骨抜き状態に近く、口調とは裏腹にその叱責はどこか甘い。最早本気で咎める気はないのか、二人の表情はすでに陥落していた。
 この様子を見てジュリアンが小さく笑う。

「あ、そういえば俺たちさ。実はリリィオス様に一度だけ会ったことがあるんだぜ! な、アーサ」

「え! そうなの?」

 ジュリアンの言葉にスズランが振り返る。

「ああ、以前うちの国で開かれた定例会の時か」

「まあ会ったって言っても、俺の目の前を通り過ぎただけだけどね」

 実質、あれが本来の役割を果たした最後の定例会だった……と思いにふけかけるが、スズランが知りたいのはそこでは無い。果然落ち着かない様子だ。

「……えっと、その」

「言われてみればスズランちゃん、リリィオス様と雰囲気が似てたもんなあ。なんて言うか透き通る肌に、物言う花みたいな佇まいでさ。あ、でも……当時の俺と同じくらいの背丈だったから、スズランちゃんよりも少し小柄かもだけど……いやぁ、俺には煌めいてすら見えたね」

 女性とあらば必ず褒め称える───それがジュリアンの信条らしい。サリベルとリーナは揃って小さく溜め息を吐き、顔を見合わせた。
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