アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~
 その温度差をよそに、ラインアーサだけが真顔で言葉を返す。

「……スズランの方が煌めいてるだろ」

「え? なんて?」

 つい漏れた本音だが、顔を赤らめるスズランを見てラインアーサは満足気に続けた。

「いや…、俺も特別に面識があるわけじゃあない。定例会で挨拶を交わした事がある程度だよ。ただ……とても聡明で、自立している方だと思った」

「そうなんだ」

 スズランは僅かに俯き、何かを思案している。

「……リリィオス公妃。このリノ・フェンティスタにおいて、随一の術力を誇った方です。そして、最強の属性である〝雷花の神気(トニトフロース・ディオス)〟を操る煌像術(ルキュアス)の使い手でした──そして今もなお、その御身を世界に捧げ続けておられる」

 背後から静かに声が落ちる。振り返ればジュストベルが穏やかに微笑んでいた。だがその瞳はどこか遠く、そして厳しさも含まれていた。

「ジュストベル先生…!」

「先日、属性の授業で触れましたね。七つの属性のうち、いかなる力にも屈さぬものがあると」

「……雷、です」

「ええ、スズラン様。貴方様が受け継がれ、その身に宿す力です」

 スズランには身に覚えがあった。
 幼い頃、力を制御出来ずに感情のままに雷を呼んだ事がある───その結果、セィシェルを傷つけてしまった事。それを思い出したのはごく最近だが、雷の力は慎重に扱わなければいけないのだと。
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