アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~

光の届く場所で

 王宮の広間に静かな緊張が満ちていた。

 王をはじめとする何時もの顔ぶれの中には、珍しい者も総出で〝その時〟を待ち望んでいる。
 しかし祝福の場であるはずの空気は、どこか張り詰めていた。それは、本日迎える者がただの客人ではないからだ。

 一度の滅びを越え、再び地上へと帰還した者。
 砂岩の国として新たに名を得ようとする地の代表。
 ───ブラッドフォード・O(オゥ)・ローズ。

 その到着を告げる報が、今まさに王宮へと届こうとしていた。王都の停車場では、すでに王の側近コルトがその身を迎えている。



 *   *   *



 王都の停車場に、低く長い汽笛が響いた。
 ゆるやかに減速する列車(トラン)。白い蒸気が立ちのぼり、視界を淡く覆う。

 車体が動きを停め、扉が開く。
 その向こうから現れた男は、どこか異国の気配を纏っていた。
 深い色合いの布地。幾重にも重ねられた装飾と、鉱石の輝きが、外套の合わせから見え隠れする。
 大地と共に生きてきた者の静かな誇り。

 ブラッドフォードは一歩、地上へと降り立つ。
 足裏に伝わる、石の感触。

(───変わらないな)

 シュサイラスアの空気も、風も、光も。
 かつて何度も訪れたこの場所は、記憶の中と殆ど変わらない。それなのに───。

(……随分と、遠くに来た)

 何故かそう思った。
 胸の奥で、静かに言葉が沈む。

「お待ちしておりました、ブラッドフォード殿」

 穏やかな声に振り向く。
 そこには、整った所作で一礼する男。ライオネル王の側近、コルト。
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