アーサ王子の君影草 下巻 ~約束の箱庭にて、再び~
 ───夜。王宮の廊下。
 ラインアーサはスズランと並んで歩いていた。
 少し後ろにはジュリアン。
 三人の足音が、やけに響く。

(……もっと早く、確かめるべきだった)

 足取りは自然と速くなる。
 胸に浮かぶのは、ひとつの疑念と──それを否定したいという、焦りにも似た願いだった。
 逃げる事はできない。スズランの為にも。
 この国の為にも。

「アーサ、無理はするなよ」

  後ろからジュリアンの声が届く。

「勿論だ。危険な真似はしないし、何があっても必ず守るよ」

 ラインアーサは歩幅を緩め、確かめる様にスズランに視線を向けた。

「無理を言ってごめんなさい。でも……わたしも行かなきゃ」

 その声に震えはなかった。
 あの日以来、ハリとスズランを近距離で対峙させる事は避けてきた。それでも、ハリの元へ向かうと伝えた時、彼女は迷う事なく同行を申し出たのだ。
 その瞳に宿っていたのは、恐れではない。
 どこか痛ましげで、けれど真っ直ぐな想い。
 まるで──ハリを案じているかの様な、言葉にできない何かを抱えたまま、それでも向き合おうとしている。

(……スズラン)

 ラインアーサはぐっと言葉を飲み込んだ。
 彼女なりの理由があるのだろう。だが、何かあってからでは遅い。だからこそ、ジュリアンに同行を頼んだ。
 ジュリアンは何も言わず、周囲へ意識を巡らせている。護る者として。
 そして自分は───。

(しっかり向き合わなければ…!)
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