野いちご源氏物語 四三 紅梅(こうばい)
ちょうどそこへ若君(わかぎみ)がやって来た。
これから内裏(だいり)に上がって、一晩宿直(とのい)をするの。
宿直のときは、子どもの正式な髪形(かみがた)ではなく、うしろでひとつに結んだだけの髪形をする。
その方が子どもらしいかわいらしさがあって、紅梅(こうばい)大臣(だいじん)様は目を細めてご覧になる。

(あね)女御(にょうご)様のところへ上がって、『母君(ははぎみ)にお(まか)せして今夜も私は参内(さんだい)いたしません』と申し上げよ」
というご伝言をお預けになった。
それから機嫌よくおっしゃる。
「よい機会だから笛を少し聞かせていきなさい。たまに(みかど)の音楽会で演奏させていただくことがあるらしいな。まだ上達しきっていないのだから、失礼がないかひやひやしている」

若君はとても上手にお吹きになった。
「悪くない。上達しつつあるのは、こちらの(みや)御方(おんかた)のところで合奏の経験を積んでいるからだろうね。さぁ、いつものように合わせてやってください」
あらためてお願いなさるので、宮の御方は()きにくく思いながらも、笛に合わせて琵琶(びわ)を少しだけ演奏なさった。
大臣様は口笛をお合わせになる。
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