野いちご源氏物語 四三 紅梅(こうばい)
宮(みや)の御方(おんかた)がお住まいの東の離れからは、お庭の紅梅(こうばい)が近くに見える。
美しく咲いているのに大臣(だいじん)様は目をお留(と)めになった。
「よい紅梅だ。内裏(だいり)には匂宮(におうのみや)様がおいでだろう。一枝(ひとえだ)折っていって差し上げなさい」
ご次女のことも、この紅梅のようにお目にかけたいとお思いになる。

「いつも匂宮様にかわいがっていただいているようだね。私も昔、そなたと同じように見習いで内裏に上がって、源氏(げんじ)の君(きみ)に目をかけていただいたのだ。そのころは若(わか)盛(ざか)りの大将(たいしょう)でいらっしゃった。時が経(た)つにつれて恋しくなる。
薫(かおる)の君(きみ)や匂宮様のことを世間は美男子だとほめそやしていて、それはもちろんそうなのだが、とても源氏の君には及(およ)ばないと私は思ってしまうのだよ。別格のお美しさだと幼心(おさなごころ)に衝撃(しょうげき)を受けたからだろう。
私はその程度のお付き合いだったが、それでも源氏の君がお亡くなりになったことがいつまでも悲しい。まして残されたお身内の方々は生きているのもおつらいほどだろうな」

幼いころからご覧になってきた源氏の君のご様子をあれもこれも思い出される。
悲しくてしおれてしまわれた。
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