幼なじみは狐の子。4〜狐の子の思い〜
9黃崎うららと恋




 HR前の美術室。

 締め切られた窓に、白いカーテン。

 黒板を前に椅子に座った美風に、女子ばかり10名ほど、美風を取り囲むように座っている。

 女子のうちの大半は、白王子グッズを美風から見える所に置いている。

 中には美風の写真が貼られた団扇を持っている者も居る。

 そういう女子達とできるだけ目を合わせない様に、美風は気を付けていた。

 
「美風様、美風様の好きなカレーの隠し味はなんですか?」


 美風の一番近くに居た黃崎うららが甘い声で尋ねた。

 
「隠し味じゃないけど、トマトの入ったカレーを食べるよ。林檎とかヨーグルトとかも入ってるかも知れないけど。」

「次。」

「白王子、お気に入りの散歩コースがあったら教えてください。」

「あっずるい。偶然を装ってばったり会う気でしょ!」

「えっへへえバレた?。そういうの、親衛隊の醍醐味なんで。」

「良いね良いねえ。白王子、散歩コース、ありますか?」

「散歩じゃないけど、よく近所のコンビ二に行くかな。その時は徒歩で。財布だけ持ってぶらぶらしてますね。」


 美風は親衛隊の質問にひとつひとつ答えていく。

 集まった女の子達は、美風のルックスに釘付けで、瞬きするのも忘れている。


「写真を撮る時は何を撮るんですか?」

「風景専門です。」

「ピアノは何を弾くの?」

「主にクラシックで、時々ジャズも弾くかな。」

「写真撮っていいですか?」

「ごめんね、写真はNG。撮られるのが本当に苦手なんだ。申し訳ないけど、撮るのは遠慮して貰えると。」

「分かりました。じゃあ代わりに『駄目だよ』って甘く囁いて言ってください!」

「……。」

 
 美風はうんざりした顔でため息をついた。

 今日集まっていた白王子の親衛隊は、黒白王子のファンクラブの中枢を占めていた。
 宗介が本気でキレるため黒王子のファンにこういう会合はなかったが、振る舞いが女の子に優しい美風はファン達の会合にこういう風にいつも付き合わされてしまうのだった。


「今回の質問会はここまで。それから美風様、前回の親衛隊・ファンクラブの投票から、学校外でコスプレをお願いすることになりました。」

 
 うららが言った。

「きゃあ、コスプレ!。最高!」

「待ってました!。楽しみにしてたんだ。」

「白王子のコス、一人2票までで、私両方王子コスに入れたんだ。絶対見たくて。」


 座った美風にうららが笑いかける。


「発表します。①王子コス。演劇部の舞台衣装を借りて、フリルのシャツ。王道ですね。②和服コス。私、美風様が茶道部だった時、思わず目を奪われましたもん。③東中コス。白の上下は美風様にぴったりです。とりあえず今決まってるコスは3件。美風様、ご検討よろしくお願いします。」

「……。」


 頭痛を覚えて頭を抱えている美風に、喜んできゃいきゃい言う女の子達。


「今日の座談会はこれにて終了。美風様、お気をつけてお帰りください。」


 うららが言うと、女の子達全員が立ち上がって拍手した。




 
 
 
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