幼なじみは狐の子。4〜狐の子の思い〜
11子狐行方不明事件
宗介の家の和室。
テーブルの上には、焼き魚と刺身の小皿。
ほかほかの炊きたてご飯からいい匂いがしている。
座布団に乗った小狐の恋は、前足で醤油の小皿を寄せると、刺身に向けて顔を突っ込んだ。
と、とたんに恋は上からパチンと頭に一発食らった。
振り返ると宗介がしかめっ面で小狐を見おろしている。
「こら恋。皿が汚れる。誰が狐の姿で食べて良いって言った?」
ドロン!と音がして、恋は小狐から人の姿になった。
頭を押さえた恋は宗介に言い訳をした。
「おいしそうなんだもん。」
「今度やったらグー。ったく。しょうがないんだから。」
宗介は恋の向かい側に座ると、自分の分の焼き魚をご飯と一緒に食べ始めた。
「そういや、インターネットで、生活習慣の見直しが話題になってた」
刺身をつつきながら、恋が口を開いた。
「早寝早起きとか、食べ過ぎないとか。水分補給とか、部屋の片付けとか。」
「良いことばっかじゃん。恋も見習って生活しろよ。」
宗介がご飯を口に運びながら言った。
「お茶はこまめに飲む。夜更かししない。朝は早く起きて読書する。部屋はすっきり整頓しておく。簡単な事だけど、お前はやってない事の方が多いだろ。」
「簡単そうにに見えて案外難しいんだよね。」
「そういう事の積み重ねが、きちんとした性格を形作るんだよ。少しずつで良いからやってみな。ふわふわした気持ちで生活するより、きちっと引き締めなきゃ。僕はもう続けてる事の方が多分多いと思う。」
「……」
「とりあえず、朝は早く起きた方が良いよ。学校での冴えが違うから。頭の回転が良くなるよ。」
「うーん、そうしてみる。」
恋は、好物の刺身を口に運びながらコクンと頷いた。