この恋を実らせるために
失くした恋と忘れられない恋
私は今、自分の人生でこれ以上ないというほどのどん底にいる。
今日は月曜日、これから忙しい一週間が始まるというのに、今朝は涙とため息で窓の外に広がる景色はかすんで見えた。
毎朝、ここで飲むコーヒーで目と気持ちをシャキッとさせて仕事に臨んでいたはずなのに、どうにも気持ちが切り替えできない。
ふと鼻の奥がツンとなり、涙がぐっとこみ上げてきてハンドタオルで目元を押さえた。
先週末、取りかかっていた案件がようやく落ち着き、久しぶりに定時で退勤できた私は大学の頃から付き合っている彼に電話をした。
その時は話ができなかったがせっかく時間ができたのだからと、私は彼のマンションに向かった。
途中でメッセージを送り、駅を出たところで夕飯を作るための食材を購入した。
インターホンを鳴らしても返事がなかったので、持っていた合鍵で鍵を開け「お邪魔します」と主が不在の中、部屋に入った。
社会人になるとそれぞれ仕事が忙しく、すれ違うことが増えたため、お互いの家を行き来できるようにと、部屋の合鍵を交換していた。いつどちらの家に泊まっても困らないよう私物もそれぞれ置いていた。
『いっそのこと一緒に住むか』
いつだったか彼はそんな話もしてくれて、あの時は仕事が大変な時期ですぐには答えられなかったけれど私は結婚を意識した。
照れ屋な彼らしいさりげないプロポーズの言葉だったのかな、と思っている。
「一緒に住むか、ってどのタイミングで答えを切り出したらいいのかな……」
彼となら将来結婚してもきっと良い家庭が築けるだろうな。
なによりいつも私の作るご飯を美味しいと言ってたくさん食べてくれる。あの笑顔を見るだけで、気持ちが満たされる。そんな相手はそうそう見つからないと思っている。
そんなことを想像していると調理の手も進む。
「うん、美味しくできた」
忙しいと野菜不足になると言っていた彼のために、野菜をたくさん入れたスープを作った。
そろそろ帰って来る頃かな、というタイミングで玄関の方から音がして、ガチャ、とドアの開く音と彼の声が聞こえた。