愛しているのは私だけ⋯⋯
上杉さんと出会ったのは、私が18になったばかりの頃。

大学に入学して間もなかった私は、近所の図書館で読み聞かせのボランティアをしていて、上杉さんはその図書館の司書。

ボランティアの仕事が終わったあと、図書館内の食堂へ向かう途中、いつもの癖でヘッドホンをしようとした。

その時、通路のら向こう側から上杉さんが歩いてきて、

「お疲れ様。君、確か⋯⋯読み聞かせボランティアの“瑤子おねえさん”だったよね?」

驚いてしまった。

まさか、以前から素敵な人だな⋯⋯と憧れていた上杉さんが、単なる学生ボランティアの私のことを、名前まで知っていてくれたなんて。

「あ⋯⋯ハイ」

緊張して、うまく言葉を返せずにいた私に、

「何の音楽聴いてるの?」

「あっ⋯⋯!」
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