一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは
「目白さんもぜひ、吉見さんとお越しください。おふたりには、特に吉見さんにはお世話になりましたから」
「ありがとうございます! 吉見も喜びます」
「細井さんも、ぜひ」
「そうですね。如月モビリティーズ様とのお付き合いで、こちらに時間を割けるかは難しいですが、都合が合えば」
自分を大きく見せたいがために国内屈指の自動車メーカーとの繋がりを口にしたに違いない。
でもきっと逆効果。廣瀬さんの、わずかに眉をひそめた表情を見ればわかる。
私はそそくさと場を辞して次のアポ先に移動するあいだも、憂鬱な気分が抜けなかった。
もう二度と関わりたくないと思っていたのに、行弘も招待されたなんて嫌な予感がする。
でも、その日をやり過ごせばいいだけのこと。
そう思っていた、のに。
「先日はどうも」という挨拶が喉元で絡まる。
顔をしかめそうになって、私は仕事中だと慌てて自分をいさめた。
挨拶は明るく、が営業として最低限のマナーだと頭ではわかっているのに、行弘の前では実践できない。
行弘と顔を合わせたのは、これで三度目。
ル・ポワンがきっかけでクライアントが増加したのは嬉しいけれど、その弊害で行弘と接触する機会も増えてしまった。
だからって、未練はまったくない。感傷に浸ったり、お茶や食事でも、という流れにももちろんならない。
しかし、会えば世間話くらいはせざるを得なくなる。
銀行への経営計画は経営者が説明するけれど、店舗設計の説明を私がフォローするケースも発生する。今日はまさにそれだった。
オーガニック化粧品ブランドを展開する企業がクライアントで、経営者は四十代半ばの女性だった。ふわふわした雰囲気の外見に反して、しっかりとした経営哲学を持っていて好感が持てるひと。
けれど行弘は、彼女のオフィス移転改築と事業計画の説明を一笑に付した。
「ありがとうございます! 吉見も喜びます」
「細井さんも、ぜひ」
「そうですね。如月モビリティーズ様とのお付き合いで、こちらに時間を割けるかは難しいですが、都合が合えば」
自分を大きく見せたいがために国内屈指の自動車メーカーとの繋がりを口にしたに違いない。
でもきっと逆効果。廣瀬さんの、わずかに眉をひそめた表情を見ればわかる。
私はそそくさと場を辞して次のアポ先に移動するあいだも、憂鬱な気分が抜けなかった。
もう二度と関わりたくないと思っていたのに、行弘も招待されたなんて嫌な予感がする。
でも、その日をやり過ごせばいいだけのこと。
そう思っていた、のに。
「先日はどうも」という挨拶が喉元で絡まる。
顔をしかめそうになって、私は仕事中だと慌てて自分をいさめた。
挨拶は明るく、が営業として最低限のマナーだと頭ではわかっているのに、行弘の前では実践できない。
行弘と顔を合わせたのは、これで三度目。
ル・ポワンがきっかけでクライアントが増加したのは嬉しいけれど、その弊害で行弘と接触する機会も増えてしまった。
だからって、未練はまったくない。感傷に浸ったり、お茶や食事でも、という流れにももちろんならない。
しかし、会えば世間話くらいはせざるを得なくなる。
銀行への経営計画は経営者が説明するけれど、店舗設計の説明を私がフォローするケースも発生する。今日はまさにそれだった。
オーガニック化粧品ブランドを展開する企業がクライアントで、経営者は四十代半ばの女性だった。ふわふわした雰囲気の外見に反して、しっかりとした経営哲学を持っていて好感が持てるひと。
けれど行弘は、彼女のオフィス移転改築と事業計画の説明を一笑に付した。