幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
教室に3人で入っていくと、先に登校していた宗介が恋に気づいた。
宗介は恋の隣の美風と律を見て、怒り笑いをした。
「いつもいつもいつまで経ってもお前は。それは浮気。駄目だろ、僕以外と登校したら。」
「上野には関係ない。新田さん、次の授業数学だよ。予習した?準備出来てる?」
「関係ありませんよ上野さんには。恋、僕もここで一緒に授業受けられないですかね?」
「あ、東中の制服、と思ったら律ちゃんかあ。」
「駒井さん、おはようございます。」
東中の白い制服の姿の律に気付いた理央がやって来た。
と、ガラガラと教室の戸が開いて、伊鞠と桂香が入って来た。
「スクープ!」
伊鞠が言った。
「何がですか。」
宗介が聞くと、伊鞠が言った。
「別になんでもないけど、私この言葉好きなのよ。気合が入って、メラっと燃える感じがしない?。スクープ!」
「人騒がせな。ネタなんてありませんよ。今日もいつも通り。」
「……新星」
「あら、向井くんが居るだけで充分ネタになるわよ。キャッチコピーはそうねえ……四角関係、新星、姫の様子を見に来る。どうかしら、良いでしょう?」
「東中でも、僕が西中の新聞で話題になってるって結構噂になってます。いい具合。加納さん石巻さん、僕の事、沢山報道してくださいね。」
律が言った。
「どうでも良いけど、恋、向井には近づくなよ。また変な薬飲まされたりしたらとんでもない。危ないんだから。分かった?。恋。」
「変な薬とはなんですか。確かにちょっと失敗だったけど。もう少しで恋が僕のものになるところだったのに。悔しいったらない。恋、あなたが悪いんですよ、あやかし狐の僕というものがありながら、上野さんに靡くなんて。」
「いい加減にしろよ。恋は僕のもの。狐のチビには関係ないの。永遠に。今までもこれからもね。」
「関係大有りですよ。僕四角関係の新星ですもん。もう報道済みですよ。恋が大好きで恋に熱く想われている期待の新星です、そうでしょ?加納さん。」
「しょっちゅう様子を見に来る程度には熱いって事よね。」
伊鞠が言うと、律は伊鞠を盾にした。
「大熱ですよ。僕は恋の顔定期的に見ないと眠れません。正カレの上野さんの事は枕元に化けて出てやる程度に恨んでますもん。恋、言っとくけど、冗談で言ってませんからね。」
「これはスクープね。向井くん、その思いについて詳しく。」
「僕は報道されるのはまっぴらだけど、いつも新田さんの事を思ってるから。向井とは比べものにならない位。」
「ふっ、樋山さんにはちゃんともう居るじゃないですか。」
美風が言うと、律はそう言って鼻で笑った。
それから、
「黃崎さん!」
と廊下から美風を舐める様に眺めていたうららに教室から声を掛けた。
「えっ」
「樋山さんが呼んでます」
げっと顔をしかめた美風に、廊下で髪を撫で付け始めたうらら。
「黃崎、呼んでない。ごめんね。」
「いいんです!。やったあ美風様と喋っちゃったあ!。ご用の際はこの黃崎うららいつでも飛んで参ります!」
律は教室の壁を挟んで仕方なくうららと話始める美風を横目で見ながら、恋の座っている机にかがみ込んで笑顔で囁いた。
「あなたは僕のものなんですからね。」
と、その律と恋の頭を、宗介が両手のグーでコツンと打った。
「いたっ」
「誰が誰のものだって?。恋、お前も。笑ってんじゃないの。」
「今撮ったわ。いい写真ね。」
伊鞠がカメラを手にほくほくした顔をした。