幼なじみは狐の子。5〜親衛隊と恋〜
恋達がバルコニーに出る頃、辺りはもう暗くなっていた。
夜空には星が瞬き、まだ時期じゃないとはいえ綺麗だ。
恋が望遠鏡で星を見ると、光る卵の様に星がぐっと近く見えた。
恋が星を見ながら口を開いた。
「1光年ってどれくらい?」
「1光年は、光が1年に進む距離。」
双眼鏡を持った宗介が言った。
「調べると距離が出てくるよ。僕達が見てる星は、光の届くスピードを考えると、かなり過去の姿なんだ。」
「ふーん」
「星を見てると、運命とかを考えない?」
美風が聞いた。
「こうやって出会って一緒に居るって言う事が、僕達の運命なんだよ。」
「恋」
宗介が言った。
「僕とお前の運命だ。僕達は幼馴染なんだから。樋山には関係ない。」
「失礼な。僕だって、転校して来て新田さんと出会う運命だったんだから。もうこれは宿命だね。」
宗介と美風に星から目を下げて律が割り込んだ。
「僕も学校は違うけど恋と運命感じてますよ。上野さんも樋山さんも邪魔者です。僕のことを忘れないでくださいね、恋。僕恋の事をいつも考えてるんだから。」
「まあまあ、仲良くやろうよ」
理央が笑いながら3人を宥めた後、恋に聞いた。
「恋、結局、四角関係誰取るの?」
理央は聞いた。
「黒白王子の三角関係の運命の相手は姫で恋だけど、新星も居るじゃん!。恋からしたら誰だと思う?」
「……」
「僕に決まってる。恋。さっさと答える。お前の彼氏は僕。一体何を迷ってるの?。」
「いっつも上野ばっかりずるい。新田さん、僕を取って。後悔させないから。僕はいつまでも2番で居る気はないよ。いつか新田さんを僕の恋人にするんだ。」
「僕じゃないと納得しないですよ。恋と僕は秘密の関係なんですから。僕を選ぶのが正論です。恋は僕と同じ狐なんですから。」
「律ちゃん、狐って何?」
理央が聞くと律が片眉を上げた。
「……この問題は、新聞部が預かるわ。」
3者3様に譲らない3人に対して苦しい顔をしている恋に、伊鞠が言った。
「とりあえず、今は星を愛でましょう。新聞部的には、四角関係は四角関係のままで良いのよ。その方が面白いし。」
伊鞠は夜空へ手伸ばして、恋達を振り返って笑った。
「どう?。満点の夜空。さあ、これから新田さんは流れ星をお腹に飲み込むわよ。」
夜空にはキラキラと絶えず揺らぎながら星が瞬いていた。
おわり