副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
 こんなことがこれからほぼ毎日繰り返されるのかと思うと気が滅入ってくる。
 だけど、紬との生活を守るためには家政婦の仕事をそう簡単には辞められない。

 家政婦の仕事にたどり着くまでに、たくさん面接をした。何度か他の会社に勤めたこともあるけれど、時間の融通がつかず、辞める羽目になってしまった。

 週三回、二時間だけ雇ってくれるような仕事は少なく、また副業先の所長のように、私の事情を汲んで仕事を回してくれるところも少ない。
 今回の指名に関しても、所長からは本当に大丈夫かという確認の連絡が入っていた。
 一応、桃井さんのシフトの時間で対応できるとは思うけれど、難しかったら相談してね、という温かいメッセージまで添えられていた。

 生活は決して楽ではないけれど、なんだかんだ今の形がベストだと思っている。

「頑張らなくちゃ……」

 そう呟いたら、私の声で起きたのか、紬がふにゃりと笑った。

「まま……?」
「あら、紬。起きちゃったの?」
「……うん」

 眠そうな声で、甘えるようにギュッと胸に顔を押し付けてきた紬をギュッと抱きしめる。

 こうしていると、少しだけ彼とのことを忘れられるような気がした。
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