代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
 七海がイヤリングを耳元へ持っていったものの、苦戦しているのを見たからだろう。

 八尋から手を差し出された。

「よろしければ、お手伝いしましょうか?」

 そう申し出られるので、七海は驚いた。

 確かにそのほうがいいけれど……。

「少し横を向いてください」

 八尋は七海の手元からイヤリングをそっと取り上げて、七海の耳元へ持っていく。

 ここまで来れば、素直に甘えたほうがいい。

 七海はドキドキしつつ、軽く逆方向へ顔を向けた。

 耳元で八尋の手が動く。

 イヤリングはバネ式なので、挟むだけだ。

 なので体に触れる必要はなかったが、なにしろ距離が近い。

 八尋の大きな手が、自分の顔のすぐ横で動いている事実に、七海の鼓動は速まってしまう。

 ほんのり体温のぬくもりが伝わるようにも錯覚した。

 とても優しく扱ってくれているのも感じ取れたくらいだ。

 だから七海の胸は、ドキドキしつつも、あたたかくなった。
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