代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
 そのようになんでもない話をしていたが、そのうちベンチがあるところへ着いた。

 庭の一番奥に位置している休憩所だ。

 八尋が「座りませんか?」と聞いてくれるので、七海も受け入れた。

 慣れない振袖と草履は、やはり少しくたびれる。

 だけど腰掛けたそのとき、ポトッと軽いものが膝に落ちた。

「あっ……」

 見てみれば、耳に着けていた白いパールのイヤリングが落っこちている。

 座った拍子に取れてしまったようだ。

「大丈夫ですか?」

 七海の声と視線で、なにかあったのだと知ったらしい八尋が聞いてくれる。

 でもすぐに気付いたようで、彼の視線も、落ちたイヤリングに向いた。

「はい! すみません、取れてしまっただけです」

 七海は微笑で八尋に答えて、イヤリングを拾う。

 でも元通り、着けようとして、困った。

「あ……、んん……」

 普段は鏡を見ながら着けるのだ。

 なにも無しでは着けづらい。

 また緩んで落ちてしまうかもしれない。
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