コイ、アイ。
#3
《Rino side》
「…これって、花岡さんすよね」
見せられた画面は、漫画投稿サイト。
しかも、私御用達の。
「え」
…何故バレた、としか考えられない。
背筋が凍る。空気が凍てつく、…気がするのは、きっと私だけなのだろう。
「さっきスマホの画面が、作家ページだったから…
もしかしてこの“上村奏”、俺だったりしません?」
この時点で私は、咄嗟に二つの選択肢を頭の中に浮かべる。
その一、「知らないふりをする」。
その二、正直に話す。
選択肢とは言ったものの、私の中に二番目の選択肢はほぼ消えていた。
また足掻けることを、私は知っているから。
「えーっと…多分見間違いじゃない?」
───でも、私は絶望的に嘘がつけない。
「花岡さん、嘘下手っすね…」
呆れたように笑う奏介くんは、さらにスマホを操作して、自己紹介ページに飛ぶ。
【恋愛経験ゼロの社会人が送る妄想ラブストーリーを書いてます】
───これほど過去の私を恨んだことはあっただろうか。
「先輩、恋愛経験0なんすね」
奏介くんは笑った。
でも、嘲笑じゃなかった。
まるで“まだチャンスがある”と喜ぶような、そんな顔だった。
「ねぇ、先輩」
「…俺と付き合ってみる気、ありません?」
「は?」
どうやら、後輩は思っているより大胆だそう。
「“妄想”、現実にしたら、スランプ脱却するかもでしょ?」
今度こそ、にやりと笑った。
狼が、獲物を見つけたような笑顔だった。
「恋愛経験0の私にこの刺激は強すぎます」 fin...?