コイ、アイ。
#2
私が峯岸くんと出会ったのは、中学一年の夏だった。
「転入生が来る」という知り、膨れ上がる期待を遥かに超えてきた峯岸くんのことは、正直一目惚れだった。
「峯岸晴馬です。これから一年間よろしくお願いします」
本当に、綺麗な人だった。
そりゃあもう、アイドルにいるんじゃないか、って疑うくらいに。
性格もよくにこやかな峯岸くんは一瞬にしてみんなと打ち解け、女子男子ともに仲良くしていた。
───覚えているかな、あの日のこと。
初めての体育祭の実行委員。
熱中症気味だった私に、ペットボトルの水を渡してくれて。
峯岸くんは実行委員じゃないのに、突然走ってきて「顔赤いよ」って心配してくれて。
峯岸くんは、私のヒーロー。
ずっと、私のヒーローでいてくれればいいのに。
…でも、峯岸くんには好きな人がいる。
美晴ちゃん。
名前の通り美しくて晴れやかな笑顔が可愛い、素敵な女の子。
美男美女のカップル。
相思相愛のふたりの様子を見てれば、私が入るのは絶対に違うとわかっているから。
「好きな人の幸せを願えれば、綺麗かもね」
当たって砕けるだけ恋。
私の初恋。
綺麗な私でいるために、今日は砕けに行くのだ。
「峯岸くん、…」
あぁ、言えない。
そんなこと、私にできるわけがない。
不細工なだけじゃない、もじもじと自分の意見を言えなくて、何度も人を困らせてきた。
ごめん。
私は未熟だから。
当たって砕けることすらできなければ、諦めもつかないから。
ずっと、片思いするモブでいていいかな。
ごめんね、峯岸くん。
お幸せに。