コイ、アイ。
#3
「晴馬と美晴、付き合ったってー!」
朝、浮ついた声で私の目は一気に冴えた。
「…つきあった、…」
私に対して言ったわけじゃない。
ちょうど私の目の前にいたクラスメイトに、興奮げに語るその様子。
嫌でも耳にしたその“付き合った”というワードに、手が震える。
「…すきだった」
トイレの個室。
カバンを机に置いたまま、一目散に奥の扉を開き、鍵をかける。
「すきだった、…!」
誰にも言えなかった。
真っ赤な顔をしながら「好きな人がいる」と恋バナをする友達すらいなかったし、
「好きです」と勇気を出して自分の想いを伝えることも叶わなかった、…いや、やらなかった。
「知ってたのに、」
いつかこんなことになると分かっていながら、ずっと自分の気持ちに蓋をしていたのは自分で。
それなのに、まだ私の容姿を憎んでいる私は、やっぱり綺麗じゃないのかもしれない。
ガクッと、足から力が抜ける。
「さようなら、私の初恋」
視界が滲むのと同時に、私の初恋は幕を下ろした。
少女漫画みたいな甘い恋なんて、できるわけがなかった。
「知ってるからさ。」 fin.