この恋は偶然?いや運命です!
「とりあえず、それぞれ自己紹介といこうか!

 まずは俺から!

藤堂 直哉です!

 発達心理臨床ゼミに所属してます。

 スクールカウンセラー志望。

 趣味はDIYで、家具とか小物を自作するのが好きです。

 困ったらいつでも相談乗るよ!

 よろしく!」

舞の視線は、斜向いに座る彼の服装に引き寄せられた。

 グレーのパーカーに白シャツ、ジーンズに白スニーカーというカジュアルなもの。

 無造作に伸びた茶髪と穏やかな笑顔が、DIYで手を動かすときの真剣な表情を想像させる。

 こういう、率先して場を盛り上げるタイプと付き合うと、私も明るくなれるだろうか。

 そんなことを思ったりもする。

次に、舞の向かいにいる男性、如月隼が落ち着いた声で言った。

「如月隼です。

 臨床心理面接技法ゼミに所属しています。

 カウンセラー志望で、趣味は音楽聴くこと。

 フェスもよく行きます!

 最近はCrimson Lilt(クリムゾン・リルト)のライブ行きました!

 好きすぎて、バイトで、お客さんを誘導する係ももやったほどです!

 今日は皆さんと楽しく話したいです!」

 直哉の明るい声。

 場の空気を盛り上げてくれる。

 それに対して、隼の声は落ち着いていて、静かに響いた。

 どちらも“いい人”ではある。

 心に残る余韻の色が違う。

──賑やかさの中でも耳に残る声。

 その低さと穏やかさが、舞の胸の奥にゆっくり染み込んでいく。

笑い声にまぎれてグラスを持ち上げた瞬間、また隼と視線が交わった。

 今度は、どちらも目を逸らさなかった。

一瞬の沈黙。

なぜか、それが心地よかった。
 

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