この恋は偶然?いや運命です!
「ノンアルコールカクテル2つ頼むな、藤堂ーー!」

 「オッケー!
 任せろ!」

 手慣れた様子で、直哉と呼ばれた男の子がタブレットに注文を入力していく。

 店員が個室に現れて、次々とテーブルにそれぞれの飲み物を置いていく。

「舞ちゃん、ノンアルコールカクテルで良かったよね。
 はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

 グラスを受け取るとき、指先がほんの一瞬、隼の指に触れた。

 ガラス越しの冷たさの中に、わずかな温もりが残る。

 どうということのない動作。

 舞の胸の奥が少しだけざわめいた。

隼がふっと笑った。

 その笑顔につられて舞も小さく笑った瞬間、目が合った。

 その一瞬が、やけに長く感じられた。

 舞は、慌てて視線を外した。

隣の隼のもとには、ビールのジョッキが置かれている。

 一応、ノンアルコールであるらしい。

乾杯の準備は整っていた。

 「じゃあ改めて!

 今回の出会いに乾杯ーー!

 こういう機会を持てて嬉しいです!
 今日は楽しみましょうー!」

 ひよりが明るく声をかけ、全員グラスを掲げる。

 舞はノンアルコールカクテルをそっと手に取り、少しだけ頬を赤らめる。

隣の隼は、自然な笑みを浮かべて舞を見つめる。

 「今日はよろしく」

「こちらこそ」

舞も小さく頷き、心臓が少し早くなるのを感じた。

 彼の落ち着いた雰囲気は、妙に安心感を与えてくれる。

 何だか、彼の横顔に見覚えがあるような気がした。

 まぁ、でも、気のせいかな。

 舞はそう思っていた。

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