訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる

13. 実家帰省とメッセージ

12月に入り、街中は赤と緑が印象的なクリスマスカラーの装飾で彩られるようになった。

耳をすませば、聴き慣れたクリスマスソングが飛び込んでくる。

来週にクリスマスを控え、どこか浮き足だった感じのする街並みを横目に、この日私は久しぶりに実家へと足を運んでいた。

実家は東京屈指の高級住宅街として知られる松濤にある。

広大な敷地をぐるりと分厚い壁で囲んだ、”お屋敷”という言葉がぴたりと当てはまるような豪邸だ。

立派な門構えの入口から敷地内に入り、庭を歩いた先に家の玄関がある。

引き戸を開けると、私の帰宅を把握していたらしい初老の使用人頭が出迎えてくれた。

「おかえりなさいませ、亜湖様」

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