訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
ドイツ発祥のクリスマスマーケットは、ヨーロッパを思わせる雑貨やクリスマスグッズのほか、冬に嬉しい食事や飲み物のブースが多数立ち並んでいる。

クリスマスらしい飾り付けがされた会場や各ブースは幻想的なムードを醸し出しており、恋人達の楽しいひと時を盛り立てていた。

要さんと一緒に飲食ブースに辿り着いた私は、この時期になると無性に食べたくなるシュトーレンをまずは購入。

続いて飲み物をと思ったところで頭を悩ませた。

「ホットチョコレート」と「ホットワイン」で迷ったのだ。

「亜湖ちゃん、どうしたの?」

そんな私の顔を要さんは不思議そうに覗き込む。

「ホットチョコレートとホットワインで迷ってます。どっちもクリスマスっぽいし、こういう時でないとなかなか飲む機会がないですし」

「それなら亜湖ちゃんが選ばなかった方を俺が買うから、それをあげるよ。そうしたらどっちも飲めるんじゃない?」

つまり飲み物をシェアしようという提案だ。

失礼ながら要さんにしては随分と気の利いた申し出に私はちょっと驚いた。

もちろん否はないので、その提案に一も二もなく頷いた。


「ホットチョコレートってこの濃厚な甘さがクセになりますよね。ココアとはまた違って、“THEチョコレート”って感じがたまらないです」

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