訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる

15. 好意の自覚(Side要)

 ……彼女に触れるな。

それが、目に飛び込んできた光景を前に真っ先に俺が思ったことである。


イルミネーションを眺めながら並木道を歩いている最中に、唐突にお手洗いに行くと宣言して消えてしまった亜湖ちゃん。

あまりに突然であり、しかも俺をその場に残していなくなったことに驚いたが、この寒さだし生理現象なら仕方ないかと納得した。

そしてしばらくしてから電話をすると、亜湖ちゃんはなぜかカフェにいるとのことだった。

その行動に不可解さを感じながらも、まぁカフェのお手洗いを借りたのかなと再び一応納得し、俺は元来た道を引き返した。

先程2人で歩いた道を1人で歩くと、不思議なことに同じ景色のはずなのになんだか違って見えた。

違いは景色だけではない。

俺を取り巻く環境にも変化が生じる。


「あの、お一人ですか? もし良かったら私と――……」

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