訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
信吾が短めの顎髭を触りながらニヤリと、そして楓が興奮気味にはしゃぐ。

そんな2人のテンションに若干置いてけぼりにされていた俺は、理解が追いつかずに疑問を投げかけた。

すると楓が目をキランと輝かせて自信満々に言い放つ。

「このまま恋人ごっこを続けて、亜湖ちゃんを落としちゃえばいいのよ!」


つまり、今の関係を維持しつつ、異性として俺を意識させ好きになってもらえということらしい。

 ……言うは易く行うは難し、なんだけどな。

つい苦い笑いが顔に滲む。

「そうは言うけど、この約2ヶ月半ですら亜湖ちゃんは俺を恋愛対象としては意識してないからなぁ。前途多難そう」

「ま、要の言うことももっともだな。楓、なんかいい作戦でもあんのか?」

「あるわよ! ズバリ、相手に好意を匂わせるのよ! ひょっとして要くんって私のこと好きなのかも⁉︎ ってドキドキさせるの!」

楓曰く、脈がない女の子にいきなり好意を告白しても困らせる可能性が高いため、まずはそれとなく気持ちを伝えることが大事らしい。

それで手応えを感じた時にこそ、ちゃんと正式に直球で告白するのがベストだという。

俺はもし今亜湖ちゃんに好きだと言った場合どうなるかを想像してみた。

 ……確かに困らせるかもな。この前も男に迫られて「ほとほと参った」って嘆いていたし。

あんな表情を万が一俺に向けられたらと思うと背筋が冷たくなる。

俺は楓の意見を採用することにし、亜湖ちゃんとは焦らずゆっくり距離を詰めようと心に誓って、その日親友夫婦宅を後にした。


そしてその帰り道、俺は偶然にも“ある人”と出くわした。

その出来事が後に波乱を巻き起こすことになるとは、この時全く思ってもみなかった――。


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