訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
要さんの自宅は、品川駅から徒歩10分のところにあるコンシェルジュ完備の43階建タワーレジデンスだった。

その29階の一室が要さんの自宅兼仕事場だという。

中に入ると、3LDKの広々とした空間が広がっていた。

案内されたリビングは窓から柔らかな陽光が差し込み、明るくゆったりとした雰囲気だ。

ソファーに腰掛けて辺りを見回すと、男性の1人暮らしにしては非常に綺麗であることに気がついた。

というか、ほとんど物がない。

よく言えばとてもシンプル。悪く言えば飾り気がなく殺風景である。

「掃除したんですか? すごく綺麗ですね」

「正直言うと、普段はもっと散らかってるんだ。その辺に物を置きがちで。亜湖ちゃんが来るにあたり、実は家事代行サービスに頼んで一通り清掃してもらったんだよね」

 ……なるほどねぇ。面倒くさがりの片鱗がちょっと窺えるなぁ。

でも私の訪問を前に気を遣ってくれたのは素直に嬉しい。

「そうなんですね。わざわざありがとうございます。女心的にも、自分のために気遣ってくれたんだと思うと好印象ですよ!」

とりあえず良い点は褒めるに限る。

問題点をビシバシ指摘してばっかりではさすがにウンザリするだろうから。

 ……でも最近は指摘よりも褒めることの方が多くなってる気がするなぁ。

この前だって絶妙なタイミングで、要さんは手を繋いできた。

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