訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
女性と同じ空間に一緒にいるのに、無言で別々のことをするというのは初めての経験で非常に新鮮だった。

その居心地の良さは俺の心を満たし、亜湖ちゃんとずっとこうしていたいと思わずにはいられなかった。

途中で亜湖ちゃんが本を取りに書斎へ消えてしまった時の物寂しさといったらない。

しばらく経っても戻って来ない亜湖ちゃんを待ちきれず、痺れを切らして追いかけるように俺も書斎へ向かってしまったくらいだ。

そこで目に飛び込んできたのは、亜湖ちゃんが背伸びをして頭上の本を本棚から取ろうと奮闘している姿だった。

その一生懸命な姿が微笑ましくて相好を崩しつつ、俺は亜湖ちゃんの背後から本棚へ手を伸ばした。

だがその直後、失敗した、と心底思った。

亜湖ちゃんの髪からふわりと甘いシャンプーの香りが漂ってきて、俺は目を見張る。

さらに、思った以上に体の距離が近いことに気づきギクリとした。

必死で平常心を装いつつ亜湖ちゃんに本を手渡したが、そんな俺を彼女が見上げてくる。

身長差があるから無意識にそうなるのだろうが、この距離感での亜湖ちゃんからの上目遣いにドキッと心臓が跳ねた。

その澄んだ瞳は物凄い引力を持っており、吸い込まれるように目が離せない。

 ……このまま抱きしめて唇を奪ってしまいたい。

そんな湧き上がってくる衝動に呑み込まれそうだったが、なんとか耐えた。

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