訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「そうそう。実はね、年始の初詣の帰りに花山先生にバッタリ会っちゃって! やっぱり街中でも目を引くイケメンぶりだったわぁ」

この話は先日要さんから聞いたのと全く同じだった。

つまり間違いなく2人は年始に邂逅を果たしていたのである。

 ……その偶然の再会がキッカケだったんだろうなぁ。

私はズキズキと痛む胸の内を押し隠しながら、何も知らない素振りで円香さんの話に乗る。

「そうなんですね! 偶然出くわすなんてちょっと運命的に聞こえます! ……連絡先とか交換したんですか?」

「連絡先は交換してないんだけど、新作のための取材に協力してもらったから発売したら1冊差し上げますね、って言ってくださって!」

「……じゃあその時にまたコンタクト取れるでしょうし、近づくチャンスですね。円香さん、花山先生のことタイプで、彼女いるのかなって前に気にしてましたもんね!」

「ん~そうなんだけど、でも今はそういうのいいかなぁって思ってて。花山先生は目の保養には最高だけどね!」

笑顔で話を聞く一方で、私はそれとなく色々探りを入れている自分に途中で気がついて、自分が嫌になった。

連絡先を交換していないと知ってホッとするなんて実に浅ましいし、何も知らないフリをしながら素知らぬ顔で円香さんの気持ちを探ろうとするのもいやらしい行為だ。

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