訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
 ……本を贈呈する約束を口頭でしているみたいだし、やっぱり要さんは円香さんに気があるんだろうなぁ。

そして自分で聞いておいて分かった事実に落胆するなんて自分勝手すぎる。

本当に私は愛され女子とはほど遠い嫌な女だ。

それにしても意外なのは円香さんである。

あんなに要さんに対してうっとりしていたのに、彼氏にしたいとは思っていない様子だ。

 ……もしかして、要さんはそういう円香さんの引きの姿勢に惹かれたのかな?

今まで散々色々な女性から猛烈アピールを受けてきているだろうから、逆に新鮮だったのかもしれない。

逃げる女ほど追いかけたくなる、とはよく聞く言葉だ。

男性が本能的に持つ“狩猟本能”を刺激するためだと言われているが、まさにこのケースなのかもしれない。

 ……この感じだと2人はすぐには結ばれなさそうだけど、きっと時間の問題だよね……。

胸がギューッと締め付けられ、息をするのが苦しい。

本当になんで私は今更になって恋心を自覚してしまったんだろうか。

こんなことなら気づかなければ良かったのに。

円香さんの前では弱り切った情けない姿を晒せなくて、私は必死で張り付けた笑みを浮かべ続けた。


◇◇◇

それから数日後のオフの日。

父から話があると突然連絡が入って、私は実家を訪れていた。

改めて「話がある」と言われると嫌な予感しかしない。

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